「外国人起業家」向け在留資格、滞在者が過去最多2万人超 不正取得、犯罪の温床にも
産経ニュースで、ちょっとショッキングな記事を見つけてしまいました。
それは、“偽装起業家を装って不正に在留資格を得る外国人が増えている”ということ。2015年4月以降、外国人起業家の会社設立をより簡単にするために、経営者向けの在留資格が緩和されましたよね。しかし、それを利用して不正にビザを取得しようと企む人も増えているんです。
このページでは、この記事の詳細をご紹介していきたいと思います。決して明るい内容ではありませんが、ぜひ最後まで読んでほしいと思います。
経営管理ビザに改正され、要件が緩和されました
なぜ、ビザの不正取得が増えているのでしょうか?そこには、「投資・管理ビザ」から「経営・管理ビザ」へ改正されたという背景が関わっているんです。
投資経営ビザについて
以前は2015年4月まで、外国人が日本で起業するためには「投資・経営ビザ」という在留資格が必要でした。ただし、投資経営ビザを取得するためには、かなり厳しい要件を満たす必要があったんです。その要件がこちら。
・会社設立後に申請すること
・500万円以上の資本金を準備すること
一つ目の「会社設立後に申請すること」というのは、実はかなり面倒なんです。なぜかというと、会社を設立するためには資本金を振り込むための「銀行口座」が必要なのですが、日本の銀行口座は3ヵ月以内の滞在では作ることができないため、銀行口座を作るためだけに3ヵ月以上日本に滞在する必要があったからです。
そして二つ目の「500万円以上の資本金を準備すること」ですが、この500万円というのは設立するメンバー全員で集めた“合計金額”ではなく、申請者(取締役)一人で500万円以上の資本金を準備しなければなりませんでした。
そう、上記のとおり「投資・経営ビザ」の要件は満たすだけでも難しかったため、日本で起業する外国人があまり増えなかったのです。
その結果「外国人起業の後進国」となってしまった日本ですが、日本政府としては、外国人が起業しやすい社会にして経済を盛り上げたいという狙いがありました。
そこで改正されたのが、先ほどの「投資・経営ビザ」。“この要件を緩くすれば、起業する外国人も増えるだろう!”ということで、「経営・管理ビザ」という名前に変わり、内容も比較的緩くなりました。
経営管理ビザについて
では、「経営・管理ビザ」に改正されて、何がどう変わったのでしょうか?
結論から申し上げますと、下記のように緩和されています。
投資経営ビザ | 経営管理ビザ |
---|---|
外資系企業の経営者のみ | 日本企業の役員就任でもOK |
500万円以上の資本金を準備すること |
いずれかを満たせばOK OR |
もちろん細かいことも改正されていますが、大きく変わったのは上記の2項です。
2人のフルタイム社員を雇用している場合、500万円の資本金は必須ではなくなりました。また、法人銀行口座はビザを取得した後に作ればいいということになっています。これらの要件を満たすことができれば、最短で3ヵ月・最長で5年の在留許可が与えられるのです。
確かにこうして見てみると、確実に要件は緩和されていますね。実際、改正された後「経営・管理ビザ」を取得している人はグンっと増えています。
(西暦)年 | 「経営・管理ビザ」取得人数 |
---|---|
2014年6月(投資・経営ビザ) | 14,206人 |
2015年4月:投資管理ビザから経営管理ビザへ改正 | |
↓2,088人増加! | |
2015年6月(経営・管理ビザ) | 16,294人 |
↓3,823人増加! | |
2016年6月(経営・管理ビザ) | 20,117人 |
↓2,771人増加! | |
2017年6月(経営・管理ビザ) | 22,888人 |
↓2,211人増加! | |
2018年6月(経営・管理ビザ) | 25,099人 |
特に増加しているのが、中国人・韓国人・ベトナム人・ネパール人となっています。
不正取得を助長する仕組みができている
都内の住宅地にたたずむ古びたアパート。一見何の変哲もない建物で、玄関先にある集合ポストが異彩を放っていた。「○○合同会社」「株式会社××」。ポストには会社の名前らしき表札が並ぶ
こちらの内容は、「ダミー会社」のことを指しています。「経営・管理ビザ」は会社設立前に申請することができるのですが、事前にオフィスは確保していなければなりません。そのため、いかにも“ここでビジネスをしますよ~!”という風に見せかけて、不正にビザを取得するんですね。偽装起業家といったところでしょうか…。
関係者によると、一部の中国人の間では、申請のために入管に提出する文書の書式や申請のノウハウが出回っており、起業を偽装するための文書を代理で書く「代筆屋」と呼ばれる闇業者までいるという。
「経営・管理ビザ」を申請するためには、どんなビジネスを行うのか、どのように利益を上げるかなどを記載した「事業計画書」を提出することが必須となっています。しかし、本当はビジネスをする気のない不正取得目的の素人が書いたところで、“実現可能性がない”と見なされ不許可になるだけですよね。そこで、偽装の文書を代理で書く「代筆屋」なども存在しています。
このように、「ダミー会社を作る → 事業計画書を代筆してもらう → ビザの申請をする」という一連の流れが、“ノウハウ”になって広まってしまっているのです。
<補足>
ビザの不正取得だけに限ったことではありませんが、誰かが不正をしてそれが成功すれば、“ノウハウ”として他の人にも広まっていきますよね。そのため、“あの人でも出来たんだか私でもできる!”と、不正に手を染める人が増えてしまうのです。何だか負のスパイラルですが、いつの時代も不正を働く人はいるのです。
まとめ
今回は、少し残念なニュースをご紹介しました。日本に限らず、どの国でも法のグレーゾーンを利用する人は一定数います。しかし、ちゃんと日本で起業してビジネスを行っている人がいるのも事実です。悪いニュースだけに目を向けて、“規制を厳しくしろ!”というのではなく、外国人が起業しやすい制度を作ったうえで、不正には厳しく対処するといったメリハリが必要なのではないでしょうか。今後の日本政府の対応にも注目したいですね。